WHAT’S CSR

経済責任と社会責任

企業の責任というのは、大別すると、経済責任と社会責任に分けることができます。

経済責任とは、企業活動のベースになるものです。消費者に対して、なるべく質の良い製品やサービスを妥当な価格で提供すること。社員に対して、定期的に十分な給料を払うこと。株主に対して、十分な見返りを出すこと。そして、国や地域に対しては、税金を納め、雇用機会を創出すること。これまでの考え方では、これらが企業の果たすべき主な役割だとされてきました。

ところが経済責任だけでは企業の「人格」として不十分である、との考え方が主流になってきました。そこで登場したのが社会責任という概念です。

社会責任には三つの段階があります。第一は、倫理観に従って、他者に対してフェアな事業活動を行うことです。法律を守るのはもちろんのことですが、人の健康や安全を脅かさない、環境を破壊しない、人権を守る、情報公開に努めるなど、公正で誠実な経営を貫くことです。不正を行わないだけなく、正しいことを行うことが重要です。

第二は、社会貢献活動に対して寄付したり、協力することです。社会還元という言葉に置き換えられるかもしれません。日本では、1980年代後半からのバブル期にかけて「メセナ」という言葉が流行し、企業が芸術・文化活動に乗り出したり、関連イベントをスポンサーしたりする動きが目立ちました。経常利益や可処分所得の1%以上を自主的に社会貢献活動に支出する企業と個人が集まる「1%クラブ」が日本経団連のなかに作られたのも、1990年でした。

2003年は日本のCSR元年

経団連が毎年行っている「社会貢献度実績調査」を見ると、最新統計年の2005年度、1%クラブ法人会員の社会貢献活動支出額は1社平均8億1100万円で、バブル期の1991年度に次いで高い数値となりました。1998年度以降の推移では、2003年度から着実な増加傾向がうかがえ、その年が日本で「CSR元年」と呼ばれたのもうなずけます。

そして、第三は、企業と社会が両方とも恩恵を受けられるWin-Winの状態を作れるよう、CSRを経営戦略上の中心課題のひとつとして位置づけることです。企業を取り巻く人々の信頼関係を形成することで、ブランドを構築し、そしてそれが最終的に企業価値を上げます。このレベルに達すると、「還元」という言葉よりも、むしろ「投資」や「戦略」と言ったほうがふさわしいぐらい、社会貢献活動は、会社の事業にとって欠くことができない柱となります。

このとき重要なのは、リスクを回避するために「仕方ないからやる」といった義務感ではありません。むしろ、地域コミュニティと新しい形態のパートナーシップを築き、既存の生産・物流・販売を通じて、また、それ以外の新しい方法で、社会貢献していくこと。「良いことを積極的に実現していく」という姿勢です。

CSRを目指すポイントとは、その内容が本業に密接に関連していることです。利益の一部を慈善団体に寄付することは、評価される活動ですが、それは「罪滅ぼし」でしかないとも言えます。また、景気の悪化で利益が減少すれば、寄付がストップして社会貢献ができない可能性もあります。サステナブル(維持可能)な社会を目指すための活動が、サステナブルでなければ、本末転倒です。

競争ではなく、協奏のビジネス

第三段階に達した企業の「本業を通じた社会貢献活動」は「社会事業」と呼ばれます。言わば、営利と非営利の中間にある事業活動です。純粋な商業主義であれば、その事業体が提供する製品やサービスは、利益追求のためのツールでしかありません。利用者は単なる消費者です。

一方、純粋な社会貢献であれば、製品やサービスは世の中にもたらされた善意を形やシステムにしたものです。利用者はその受け手でしかありません。また、その事業体で働く人を見ると、前者の場合は、高い給与や社会的ステータスのある役職を魅力とし、後者の場合は、無償奉仕と引き換えの満足感を魅力とします。

しかし、その中間にある「社会事業を行う組織」(企業でもNPOでも)では、その取り組みや哲学に賛同した消費者が製品やサービスの「支持する利用者」になり、働きがいを求める労働者が「賛同する従業員」として集まり、価値観に共鳴する企業が「協力的な取引先や提携先」になっていきます。これが、「競争」ではなく「協奏」の構図を作ります。そして、最も高い段階のCSRとは、そんな構図を作るための企業の活動なのです。